俳句集「寒椿」
目次
福田芳子 昭和五十四年から平成十四年の作品福田芳子 角川・平成俳壇入選句他
福田耕二 昭和五十九年から平成十四年の作品
福田芳子 昭和五十四年から平成十四年の作品 176句より
[昭和五十四年] 口紅の色かへてみる晩夏光 |
[昭和五十五年] エアメール紙雛一つ添へにけり |
[昭和五十六年] 縞柄を今も好みて一葉忌 |
[昭和五十七年] エリカ咲くゴールデンゲイト小春風 |
[昭和五十八年] 踏絵せし島より着きし干し魚 |
[昭和五十九年] 寒鯉の味噌汁うまし信濃宿 |
[昭和六十年] 山桜吹雪けるもとに父母眠る |
[昭和六十一年] 連なりて天安門に凧揚がる |
[昭和六十二年] 半生をなじみし櫛や木の葉髪 |
[昭和六十三年] 水軍のおこりし島や若芽干す |
[平成元年] かるく噛み草笛鳴らすこと覚え |
[平成二年] はなだ色の僧の衣や業平忌 |
[平成三年] 烏賊干して舟屋は海に浮きにけり |
[平成四年] のびやかな冬青草は曼珠沙華 |
[平成五年] 風鈴をはづして姉は眠りけり |
[平成六年] 亜麻色に光る寒天干されけり |
[平成七年] 瓦礫山中よりいかなご炊く匂い |
[平成八年] ミシガンの娘を連れ都をどりかな |
[平成九年] 桶の箍(たが)しめて酢茎を漬けにけり |
[平成十年] 象の目の笑ふに似たり涅槃絵図 |
[平成十一年] 甘茶受くひとかたまりの異国人(東大寺) |
[平成十二年] 園児等の鬼ばかりなる節分会 |
[平成十三年] 身ほとりに白きものふえ五月来る |
福田芳子 角川・平成俳壇入選句他
[斎藤夏風選] 師走来てサーカスの来て復興地 |
[広瀬直人選] 鉄板に油の伸びる宵戎 |
[茂木和生選] 省略のききすぎてゐる水着かな |
[鈴木鷹夫選] 上の姉中の姉ゐて日脚のぶ |
[斎藤夏風選] 替草鞋もちし白丁(よぼろ)や加茂祭 |
[茂木和生選] いかなごの寸を揃えて売られをりやかに新幹線が走りぬけていく |
[河野多希選] 大文字尽きてしばしの燠あかり |
[斎藤夏風選] 神輿洗ひ桶に汲まれし加茂の水 |
[正木ゆう子選] 返信を急がすごとくに法師蝉 |
[森田峠選] 白菜のかがやく玉をみせて糶(せ)る |
[斎藤夏風選] 剛力の弓返りけり的始 |
[茂木和生選] この漬菜富士の雪解に育ちしと |
[広瀬直人選] 煽りては叩きては芝焼きにけり |
[和田悟朗選] 立葵大漁旗のごときかな |
[星野麦丘選] 吉原に馬刺の店や其角の忌 |
[斎藤夏風選] 香水のある時たのし時に憂し |
[広瀬直人選] 風邪に寝て天井の染み貌となる |
[茂木和生他選] 金魚屋にすっぽんの桶目高の桶 |
[有馬朗人選] 親を跳び子を飛びこえてあめんぼう |
[和田悟朗選] 進むともみえず船渡御すすむかな |
[斎藤夏風選] 浪花けふ梅鉢づくし船祭 |
[広瀬直人選] 角切や角手掴みの勢子頭 |
[河野多希選] 百日紅語りつがれし祖父の詩 |
[斎藤夏風選] 炉を開き菊炭の燠うつくしく |
[河野多希選] 片袖を残し菊師は一服す |
[河野多希選] あした炊く小豆粥なり大納言 |
[山田弘子選] 八つ目の橋を渡りて螢待つ |
[伊藤道明選] 木の葉髪歎けば更にふゆるなり |
福田耕二(廣宣)昭和五十九年から平成十四年の作品 70句より
[昭和五十九年] 外つ国に嫁みごもりぬ天の川 |
[昭和六十年] 遮断機に身をひるがへす燕かな |
[昭和六十一年] 雪柳風に吹かれてらりるれろ |
[昭和六十二年] 草餅や懐ふかき吉野山 |
[昭和六十三年] メーデーの列をはなれて古書漁る |
[平成元年] 陽は富士に山荘しばし時雨けり |
[平成二年] 傾きし蘇州古塔や秋の声 |
[平成四年] 背に笑みを見せてさがるや勝相撲 |
[平成六年] ふる里は河童の町よ筑後川 |
[平成七年] 輪に入らず妻は手だけの盆踊 |
[平成八年] 粉雪の睫にふれて溶けにけり |
[平成九年] 角切られ鹿蹌踉と去りにけり |
[平成十年] 職退きし肩に落葉のとまりけり |
[平成十年] 柿の里竹馬の友も消えにけり |
[平成十一年] 星月夜寝釈迦のごとき六甲山 |
[平成十一年] 竹刀ふる明治生まれや文化の日 |
[平成十二年] 父の日や晩酌のみが父に似て |
[平成十二年] どんぐりを拾いし吾子も定年か |
[平成十三年] 春愁や時には吾子も遠き人 |
[平成十三年] ユニクロのTシャツの嫁今朝の夏 |
[平成十四年] 故里の山に遊びて春隣 |
[平成十四年] 林檎の唄離島の炭坑(やま)に流れけり |